パネルの家

年末年始に休暇を取って日本に帰って来た時、実家の近所に次々と建つ新しい家が、なんか外見はお洒落な洋風なんだけど素材感がスペインとは全然違ってる、所謂新建材ばっかりなんだと強く感じるようになったのは、多分1990年頃だ。

物心ついた頃にはそういう家が周りに一杯だった若い世代、そして集合住宅と言えば日本のマンションや団地しか知らない人たちがヨーロッパに行って暫く生活すると、往々にして水漏れその他の故障やトラブルを経験して、日本じゃこんな事考えられない、こっちの家ってどうしてこうなの? と思うらしい。
そういうブログを幾つかを読んだ。
経済大国になる前の日本を余り知らない世代でもある訳で、
誰でも自分の知ってる社会を基準にして他の社会を判断するのはまあ当然なんだけど…

子供の頃に住んでた日本の田舎の古い社宅は、雨漏りがして、夜になると天井裏を鼠が走った。
昭和30年代の話だから、それらの社宅が建てられたのは多分戦前。
でも屋根は本瓦で壁は土壁、窓には全部雨戸が付いてたんだ。

話が逸れた。
現代日本からヨーロッパに行って、むこうの古い家のトラブルに呆れる人たちに、日本の今の家は水漏れする程古くなるまで持たないだけで、ヨーロッパの古い家の方が家としてはずっと優れているのだと説明するのは難しいですね。
少なくとも東日本大震災の少し前くらいまでは、いくら説明しても余り共感して貰えなかったと思う。

そういう若い世代の海外経験者とブログで「三匹の子ブタ」の話をした事がある。
厳密には三匹の子ブタの家の話で、レンガの家の方が木や藁で作った家よりいいというのは西洋人の偏見で、日本の気候風土には木の家が合ってるんだという彼女に、でも木の家ってどういうのか、考えてみて欲しかった。

確かに日本の伝統的家屋は木造で、田舎には藁じゃないけど茅葺の屋根があった。
でもそういう家の壁は土壁だった事を、ビニールクロスに覆われた今の家に住む若い世代は知ってるだろうか?

そしてヨーロッパの古い集合住宅は、コンクリート・スラブではなくてレンガを積み上げた表面を石膏で覆った壁(スペインでは、その上に漆喰系の塗料が塗られている事が多い)で出来ているという事も、多くの日本人は知らないと思う。
今の日本の家は、言ってみればパネルの家だ。
一見木や石やレンガ、時には塗り壁に見えるパネルで覆われた家。

近所の住宅地では築30年~40年?と思われる家が壊されては新しいパネルの家が建つ。
それも元は1軒だった土地に、庭の殆どない小さな家が何軒か建つのが普通になりつつある。

少し前にテレビで、日本全国に増加する空家の問題をどうするかってやってたけど、今空家になってる家は新建材が主流になる前に建てられている。
それでも40年経つと日本の家は壊して建てなおすしかないか、リフォームするより新しく建てた方がいい状態になる。
それだけのお金と労力をかけられない空家が全国にいっぱいあるらしい。

今続々と建てられてるちっちゃなパネルの家は、30年後にはどうなってるんだろう?