タオル(抜粋)

お洒落な服や高いものはスペイン、でもトレーナーみたいな普段着や安いものは日本…
というような話を帰国時に通訳友達としたのは1990年代の後半だったろうか?

お洒落な服や高いものというのは、言ってみれば都心のデパートや専門店で買うようなもの。
例えばヨーロッパのブランド品なんかは日本よりスペインの方が安く買える。
ブランド品でなくても洋服やアクセサリー、化粧品等は、スペインからお土産に買って来るもの。
EC加入後のスペインでは輸入品も増えたし、スペインの国産品も一般にデザインや種類が豊富になった。
以前とは違って、日本に帰国した時に買って来よう、それもわざわざ都心ま出て行ってスペインに持って帰ろうと思うようなものは少なくなっていた。

でも例えば、家で着てるジャージーみたいなのは日本の方が安くて種類も多く、同じ値段のスペイン製品と比べると品質がいいというような話。

そういう話をしていたら、ひとりが「でもタオル製品の類は絶対スペインの方がいい」と言い出した。
確かに元々が手拭文化の日本のタオルは一般に薄い。
景品のタオルなんて正に手拭並みにペラペラ…スペインじゃ安いタオルでも、ああいうのはないよね…安くても日本のタオルよりは分厚くてしっかりしている…

…これは家族や親戚へのお土産に結構いいんじゃないか? 日本にはないような大きなサイズのバスタオルをひとり一枚とか…と思いついて、次の帰国時に一枚買ってみた。帰国中に訪ねるつもりだった祖母へのお土産。
バスタオル一枚でトランクが半分いっぱいになった。…これは…みんなに一枚づつというのはちょっと無理ですね…

ちなみにスペインのバスタオルというのは日本のバスタオルより大きい。
日本でいうバスタオルは、むこうのシャワー・タオルくらいの大きさだろうか?

祖母はそれがタオルケットだと思った。
貰ったタオルにくるまって寝たら、私に触れてるような気がするからと電話で繰り返した。

大判のバスタオルをひとり一枚づつ、それぞれに合った色やデザインを探して…というお土産プロジェクトはあえなく頓挫…

それでもスペインを引き揚げて日本に帰って来る時には、タオルを買って引っ越し荷物に入れた。
バスタオルと日本のスポーツタオルくらいの大きさのフェイスタオルをセットにして色違いで2組…お土産には不向きな事が分かったので、せめて自分用に買って行こうと思ったのだ。

日本のマンションの浴室や洗面室は、余り空気の通らないところにある事が多い。
お風呂はユニットバスで浴室全体がプラスチックで覆われているので、入浴後は換気扇を回さないと湯気がこもる。
タオルかけはスペインのように自分で選んで好きなところに付けるのではなく、決まったものが最初から付いている。
そこにタオルをかけてみると高さがギリギリ、タオルが大きすぎたのだった。
それでも意地で?使っていたら、ある時、あっという間にカビが生えた。
1階のその部屋では、入浴後に換気扇を回しても中々水分が全部取れるところまでは行かない。
暫くは換気扇を回して、後はドアを開けて乾燥させるようにしていたら、浴室からの湯気が知らず知らずの内にタオルについて、タオルを湿らせていたのだ。

で帰国後3年目にスペインに行った時、今度はシャワータオルを買って来ました。
フェースタオル(スペイン・サイズの)、そしてバスマットを同じ色で2組。
当時マンションは2階の部屋に移っていて、そこでは浴室ドアの外側にタオル掛けが付いていた。
低い位置に付いているのでシャワー・サイズでもギリギリ…
1階の部屋よりは乾燥し易かったけど、一度カビたら使えなくなるので、入浴後は浴室の中が乾くまでドアを開けないようにしていた。

そのスペイン製シャワータオルがそろそろ洗いざらしになって来た頃、イトーヨーカドーのセールでホテル仕様のタオルを買った。半端品の見切り市みたいなので、かなりお買い得。
厚手でスペインのタオルに引けを取らない。
フェースタオル(日本サイズの)と、ハンドタオルも来客用に同じ色で揃えて。

そのホテル仕様のバスタオルが、時々臭うようになったのですね。
洗濯はマメに、漂白剤も使っていたけれど、雨の多い日本では、思った時に洗濯できない事も多いから、雑菌が繁殖しちゃったか??

そして一度臭うようになったら、洗濯しても又すぐ臭う…

で買い替えたのは、スペインのタオルに比べれば薄いけれど、日本のタオルとしてはまあまあの厚さのシリーズ。
スペインのものやホテル仕様に比べるとスカスカ軽い感じだけれど、ない物ねだりをしてもしょうがないので、好きな色を選んで又2組。

そうやって言わば仕方なく買ったタオルがですね、使ってみると意外に良かったのです。
何故か? それは「乾き易い」から。
スカスカなのも目が粗いせいではなく、織り糸が細いからかも知れないと思う。

スカスカ軽いタオルの方が、日本の気候や家に合ってるというのは、なんとなく悲しくもあるのだけれど。
そして、それに気が付くのに帰国後12年を要したっていうのは…う~ん、何て言ったらいいんだろう…