「半世紀」で触れた Moby Grape というグループについて、もう少し。
高校生の頃、アメリカ出張する父にお土産のリクエストをした。
多分、そういうリクエストをしたのは初めてだったと思う。
新聞か何かで批評を読んだ Dylan Thomas という詩人の朗読レコード？
今も残っているけれど聴いた記憶は皆無…多分一度くらいはかけてみたと思うけど聞き取れなかったんだ。
父は妹にも何かと思って「ビートルズのレコードを買って来た」と言った。
が、差し出されたレコードはビートルズではなく、Moby Grape という知らないグループのレコードだった。
「これビートルズじゃないよ」と言うと父は「おかしい」と首をかしげていたが、恐らく父はビートルズという名前だけは知っていて、レコード店で「ビートルズみたいな、若者に人気のあるレコード」と格好つけてリクエストし、店員は当時売り出し中だった、或いは個人的にお薦めだった Moby Grape のレコードを差し出し、カバー写真を見てもビートルズじゃないと分からなかった父は、それをそのまま買って来たんだろうと想像。
最初にそのレコードをかけた時の事はもう覚えていない。
当時の我が家にはレコードの聴ける環境は家に一台しかなかったと思う。
そのレコードがすごく気に入ってしまった私は、その頃日本のグループサウンズに夢中だった妹と交渉して、そのレコードを自分のものにした。
グループに関する一般情報は日本では皆無に近かったけれど、音楽雑誌などに多少のニュースは出ていたのか、新しいのが出ると知って渋谷のレコード店に探しに行ったような記憶もある。
最初のLP：Moby Grape の他に、学生時代日本でゲットした3枚：Wow, Grape Jam, Moby Grape 1969（順不同）の後、彼らはどこかに消えてしまい、僅かなニュースも出なくなった。
全くの偶然で出遭った後、4枚のLPレコードだけを残して消えてしまった幻のグループ。
その音楽とジャケットやその裏に印刷された彼らの写真が、グループに関するほぼ全ての情報だった。
写真の中には、メンバーのひとり Skip Spence の、精神に異常をきたしているのでは？というような写真もあって、でも全て想像の世界だった。
彼らがローリング・ストーンズに匹敵する実力を期待されながら、プロデューサーだかマネージャーだかとのゴタゴタが原因で表舞台から消えてしまったらしい…と想像できるような事がどこかに書かれていたのをいつ読んだのか…
「想像」というのは、多分英語で書かれてたからだと思う。
Skip Spence は実際精神を病んだ事、それが原因かどうかは分からないけれど亡くなってしまった事も、いつ、どのようにして知ったのか、もう覚えていない。
覚えているのは、インターネットが盛んになり始めた頃、グループについてのサイトを見つけた事、そして彼らを懐かしみ、消えてしまった事を嘆き、そしてそのサイトを見つけた喜びを語る数々の書き込みを読んで、思わず自分も書き込んだ事…一生懸命英語で考えてね…
そのサイトはいつの間にか消えてしまったみたいだけれど、今では日本語のウィキペディアにもグループに関するページがある。
リアルタイムで彼らを知って、情報のない中でフォローした人間から見ると、なんかちょっと違うという感じではあるけれど。
CDとなって出版されたアルバムもある時見つけて買った。
（内 Legendary Grape と題された1枚は、1980年代に出された新しいアルバムだった事を今回発見。既に持っていたLPレコードのCD版だと思って、買っただけで満足していたのか？ 聴いてなかったのか？？ 今回改めて引っ張り出してみたら馴染みのない曲名が並んでいるので、再生しながら英語の説明を読んでみたけど、老眼には厳しい小さな文字で、英語の辞書を引く気力もなく…まあ何となく、彼らが不運にめげず自分達の音楽を追求しようとしたというような事が書いてあるみたいだ。）
YouTube にも色んな動画が出ていて、古いアルバムだけでなく、ライブやグループのメンバーのその後の活動と思われるものもある。
そんな中で、亡くなった Skip Spence の代わりに彼の息子がボーカルで参加して、グループが往時の曲を演奏しているらしい動画。
グループ名に Guys が付いているのは、上の Legendary Grape と同様、Moby Grape という名前だと、彼らが消えざるを得なかった（純粋な音楽上の問題ではない）理由によるものらしい。
